歯周病治療
歯周病とは
歯周病とは、歯垢(プラーク)や歯石内の歯周病菌に感染することで、歯茎が腫れたり、歯槽骨(歯の土台となる骨)が溶けたりする病気です。初期段階には痛みなどの自覚症状がほとんど現れないため、早期発見・早期治療をはかるのが難しい病気です。症状が進行すると歯がぐらぐらと動くようになり、最悪の場合、そのまま歯が抜けてしまうこともあります。しかし、早期に治療を受けられれば症状の進行を抑制することも可能ですので、「おかしいな」と思われた時にはすぐに受診するようにしてください。
主な歯周病の症状
- ブラッシング時に歯茎から血が出る
- 冷たいものや甘いものがしみる
- 歯がぐらぐらと動く
- 歯と歯の間に隙間があり、よく食べ物が詰まる
- 歯茎から膿が出る
- 歯茎がブヨブヨとしている
- 口臭がする
- 前よりも歯ぐきが下がってきたような気がする
- 朝起きたとき、口の中がネバつく感じがある
- 歯ぐきが赤く、腫れたり痛みがある
歯周病の種類
歯肉炎
歯肉炎とは、歯肉に炎症性病変が生じたもので、歯根膜や歯槽骨はまだ破壊されていない状態です。
歯周炎
歯周炎には「成人型」と「早期発現型」の2タイプがあります。
成人型
成人型歯周炎と呼ばれるもので、歯周炎の約90%を占めます。多くの場合、口腔内に歯垢や歯石が付着することで、中等度の歯周炎に進行します。
早期発現型(10代の頃より症状が現れる若年型)
若年性歯周炎は、歯周炎患者の8%未満ですが、30歳以下の若い年齢の人に発症し、進行も急速なため、プラークコントロールが不十分だと重度の歯周病に進行し、前歯と6番(第一大臼歯)に限って発症することがあります。
家族集積性が見られることがあり、一般的な歯周病の治療法ではなかなか治りません。
歯周病を予防するには
歯周病を予防するには、適切なブラッシングなどの毎日のケアのほか、規則正しい生活習慣、ストレスを溜めない生活、煙草を吸わないなどが大切となります。こうしたセルフケアと合わせて、歯科クリニックで定期検診を受けることで、より効果的に歯周病を予防することができるようになります。
歯周病の検査
全身診査
健康状態や口腔衛生状態などをお伺いし、患者様の生活状態などを把握します。
口腔の診査
プラーク付着の評価、歯周組織の診査、歯周ポケットの測定などを行います。
レントゲンによる判定
1年に1回を目安に歯槽骨の吸収程度を観察します。
メンテナンス後の再評価
再評価の結果を患者様にお伝えし、必要に応じて各種治療を行います。
歯周病の進行と歯茎の状態
健康な歯茎
歯周ポケットの深さは0.5~2mm程度です。歯槽骨の破壊もなく、歯茎は引き締まっています。
歯茎の状態
- 硬く引き締まっている
- 弾力がある
- 色はサーモンピンク、ライトピンク
- スティップリング(健康な歯茎に見られる複数の陥凹)がある
- 歯と歯の間の歯茎がとがっている
歯肉炎の歯茎
歯周ポケットの深さは2~3mm程度です。歯茎が赤く腫れて出血しやすい状態ですが、また歯槽骨は破壊されていません。
歯茎の状態
- 歯茎が赤く腫れている
- 歯と歯の間の歯茎は丸みをおびている
- ブラッシングすると時々出血する
- スティップリングがない
- 歯茎に溝(仮性ポケット)ができてしまい歯垢が入りやすくなる
軽度歯周炎の歯茎
歯周ポケットの深さは3~5mm程度です。歯茎の腫れが大きくなり、歯周病菌が歯根膜や歯槽骨を破壊し始めた状態です。
歯茎の状態
- 歯茎の炎症が進行すると発赤腫張が著しくなり、磨くと出血する
- 歯を支えている組織にも炎症が進み、歯周ポケットが形成され骨の吸収が始まる
- 歯茎が紫をおびた赤色になる
- 歯の根元にたくさんの歯石が付いている
- 歯が浮く感じがする
- 歯茎が時々むずがゆい感じがする
- 朝起きると口の中がねばねばする
重度歯周炎の歯茎
いわゆる「歯槽膿漏」の状態です。歯周ポケットの深さは6mm以上になり、歯槽骨の破壊が半分以上にまで進行し、歯がぐらぐらと動くようになります。
歯茎の状態
- 歯周病がさらに進行すると歯の支えの多くを失い、骨吸収が歯根長の1/2以上になると、歯がぐらつき始め膿が出始める
- 口臭がひどくなる
- 歯がグラグラで動いて抜けてしまう
- 歯根が露出してくる
- 冷水でうがいをするとしみる
- 歯肉が腫れてブヨブヨしている
- 歯が長くなった気がする(歯茎が下がった)
歯周病の治療ステップと改善まで
歯周病は患者様自身のケア状況によって、治癒までの期間は変化します。歯周病は長い年月を経て進行しているため、治療には少し時間がかかりますが、歯周病の約85%は、歯周初期治療で改善に導くことが可能です。
歯肉炎の治療ステップ
歯肉炎はブラッシングによるプラークコントロールを徹底することで改善していきます。
ただし、改善したからといってプラークコントロールを怠ると歯肉炎、歯周炎へと移行します。
初診 |
診療中(3週間) |
診療後(3カ月) |
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ブラッシングによるプラークコントロール |
※治療内容や期間などはあくまで目安です。患者様の状態によって異なります。
中等度歯周炎の治療ステップ
歯周病が進行すると、ブラッシング(歯磨き)だけでは治療が難しくなる場合があります。
スケーリング・ルートプレーニングで歯肉縁下の歯石や歯垢を除去し、歯周病の進行を抑え、口腔内を清潔に保つことで、健康な歯茎を取り戻します。
初診 |
SRP前 |
SRP後 |
治療後
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ブラッシングによるプラークコントロール |
スケーリング・ルートプレーニング |
※治療内容や期間などはあくまで目安です。患者様の状態によって異なります。
重度歯周炎の治療ステップ
歯肉縁下や根分岐部の病変を除去するために、炎症を抑制し機能回復をはかるように努力します。
歯周病が重度まで進行すると、場合によっては歯周外科手術も必要となります。
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初診 |
SRP前 |
SRP後 |
歯周外科中 |
術後 |
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ブラッシングによるプラークコントロール |
スケーリング・ルートプレーニング |
歯周外科処置 |
※治療内容や期間などはあくまで目安です。患者様の状態によって異なります。
歯周内科
歯周内科とは
歯周内科とは、内服薬により歯周病の治癒をはかる治療方法です。現在、歯周病の治療はスケーリングやSRP等、外科的な治療が主流ですが、歯周内科では一般的に、歯周病菌を死滅させる効果があるとされている「ジスロマック」という抗生物質を内服することで、口腔内を除菌し、歯周病が進行しにくい環境を作ります。
歯周内科治療の流れ
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1.位相差顕微鏡による口腔内の細菌の確認
位相差顕微鏡で口腔内の細菌の状態や量、そしてカビが多いかなどを確認することで、治療に使用する薬を適切に判断します。
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2.細菌の除去薬剤の内服
歯周病菌を死滅させる効果があるとされている「ジスロマック」という抗生物質を内服することで、口腔内を除菌し、歯周病が進行しにくい環境を作ります。
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3.カビの除去薬剤、あるいはカビ取り歯磨き剤でのブラッシング
カビの除去薬剤の内服、あるいはカビ取り歯磨き剤でブラッシングすることで、口腔内を清潔な状態にします。
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4.除菌後の歯石取り
抗生物質により口腔内を除菌した後、歯石取りを行い、歯周病が再発しにくい環境を作ります。
歯周内科治療後のケアが大切です
歯周内科治療は歯周病に対して、短期間で高い効果を発揮するとされています。しかし、毎日のブラッシングなど、治療後のケアが適切に行われていなければ、再発したり、症状が後戻りしたりすることがあります。なので、歯周内科治療が終わった後も歯科クリニックに通い、定期検診を受けて「お口の中が歯周病菌に再感染しやすい状態になっていないか」をチェックしてもらうようにしてください。
予防歯科
プラークコントロール・ブラッシング指導・PMTCで歯周病を予防します
歯周病予防として、当クリニックではプラークコントロール、ブラッシング指導、PMTCに力を入れています。患者様自身でケア可能な範囲については、適切なケアが行えるようになるまで丁寧にブラッシング指導し、プラークコントロールがはかれる状態に持っていきます。患者様自身でケアが難しい部分や汚れについては、歯科衛生士によるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)によって、歯の隣接面や歯肉縁下のバイオフィルムを破壊したり、歯石を除去したりすることで、口腔内を健康な状態に維持しやすい環境を作ります。
PMTCとは
PMTCとは、歯科衛生士などが行うスケーリング、ルートプレートニングを含むクリーニングのことです。患者様自身でケア可能な範囲については、適切なブラッシングなどによりプラークコントロールをはかることが可能ですが、ケアが難しい範囲や汚れ、特に歯の隣接面や歯肉縁下などを適切にケアすることは難しいため、歯科クリニックで歯科衛生士などによるクリーニングを受ける必要があると言えます。PMTCであれば、ハイリスクゾーンである歯の隣接面や歯肉縁下のバイオフィルムを破壊したり、ご自宅でのブラッシングでは落とせない歯石を除去したりすることができるので、定期的に受診することで口腔内を清潔な状態に保つことができるようになります。
定期検診で効果的に病気予防を
歯科クリニックで定期検診を受けることは、虫歯や歯周病などの病気予防に大変効果的です。定期検診の期間は患者様のお口の中の状態によって異なるため、スケーリング後も早期に歯石が付着しやすい方につきましては1ヶ月半に1回程度、歯垢の付着が軽微である方につきましては半年に1回程度など、患者様それぞれの状態に合わせて適切な期間をお伝えさせて頂いております。
妊婦歯科検診
妊娠中でも基本的な歯科治療は受けられます
妊娠中は歯科治療が受けられないかといえば、そんなことはありません。妊娠4~7ヶ月目頃の安定期であれば、基本的な歯科治療はほとんどを受けて頂くことができます。また、麻酔やレントゲンの影響も限りなくゼロに近いので、ご安心ください。
もちろん、どうしても必要な場合にご相談した上で進めてまいります。
妊娠中は病気にかかるリスクが高まります
妊娠中は女性ホルモンの急激な変化により、唾液の中和力や免疫力が減少したりすることから、口腔内の細菌が増加して虫歯や歯周病など様々な病気にかかりやすくなるとされています。特に歯周病は、歯周病菌が女性ホルモンを栄養源とするため、発症リスクが一段と高まります。妊娠中に歯周病にかかると、早産や流産のリスクが通常の5倍以上になるとされていますので、必ず歯科クリニックで治療を受けられるようにしてください。
お母様の歯の健康は、生まれてくるお子様の歯の健康にもダイレクトに影響することがあります。妊娠中や出産後に歯のトラブルを悪化させないためにも、そして生まれてくるお子様の歯の健康を守るためにも、妊娠がわかった時点でできるだけ早く歯科クリニックを受診し、歯の健康状態をチェックしてもらうようにしてください。
麻酔、レントゲンが不安な妊婦様へ
基本的に妊娠中に使用しても問題のない麻酔薬を使用しており、レントゲンの影響についても限りなくゼロに近いので、妊娠中であってもこれら処置・検査は問題なく受けて頂くことができますが、それでも不安な方は多いかと思います。そうした方々の不安を少しでも軽減するために、レントゲン撮影がどうしても必要と判断した時には、その影響の少なさを詳しくご説明し、ご納得頂けた患者様にのみ実施するようにしています。また麻酔についても、処置の前にかかりつけの産婦人科の先生に使用する麻酔薬をご確認頂き、打ってもいいと承諾頂けた場合のみ使用するようにしています。